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「ジャン・ジョルジュ トウキョウ」エグゼクティブシェフ 望月 良一氏 インタビュー

ニューヨークでスパイスの魅力をフューチャーした斬新な料理を提供し世界的に注目を集めているフレンチ・シェフ「ジャン・ジョルジュ」が世界中に展開するレストランの一つ「ジャン・ジョルジュ トウキョウ」のエグゼクティブシェフである望月良一氏に同店の料理の特徴、スパイスや料理に対する想い、HCJ2022に対する期待などについてお聞きしました。

ジャン・ジョルジュ トウキョウ
エグゼクティブシェフ
望月 良一氏
イタリアンレストランにて勤務後、「 Union Square Tokyo 」の オープニングより副料理長として務め、 2015年、同店の料理長に就任。
2016年、トリュフフレンチ 「 Terres de Truffes, Tokyo 」の料理長に就任。
2017年より「ジャン・ジョルジュ トウキョウ」の料理長に就任。

ャン・ジョルジュ トウキョウの特徴についてお聞かせ下さい。

 当店は現在ニューヨークに拠点を置くフランス出身のシェフ、ジャン・ジョルジュが世界で約40店舗展開しているレストランの一つです。
 ジャン・ジョルジュはフランスの三ツ星フレンチ・レストラン「オーベルジュ・ド・リル」で修業を積んだ後、タイ・バンコクのオリエンタルホテルへフレンチのシェフとして赴任した際、賄いで食した現地スタッフが作ったアジア料理に感銘を受け、とりわけ使用されていたスパイスやハーブへの造詣を深めて行きました。
 その後台湾、インドネシア、そして日本などアジア各国を巡り、経験を重ねて独自のアジアン・テイストを盛り込んだオリジナリティ溢れるフレンチの世界を創り上げました。
 現在、メニューは世界各国に展開する店舗のシェフとのやりとりを経て国ごとに調達可能な食材、スパイスやハーブによって若干の調整を行うことはあるものの、基本的に全店舗でジャン・ジョルジュの世界観を表現するための共通のレシピで提供されています。

体的な料理の特徴についてお聞かせ下さい。

 当店の料理はハーブやスパイスの持ち味を活かした料理が多いのですが、辛みを特徴とするスパイスも取り入れています。
 辛さのレベルは国々で異なります。例えば唐辛子ひとつをとってみても千差万別です。
 国ごとにバランスをとって味や香りを損なわないよう仕上げています。
 スパイスに関しては日本国内で一部調達できないものがあるため海外から調達することがありますが、ハーブに関しては日本でも近年フレッシュなものが多種多様入手できるようになってきたので大きな問題もなく、ジャン・ジョルジュが求めて創り上げた味を味わって頂くことができます。
 フレンチに辛みのあるスパイスを使うことはあまり無く、ある意味ジャン・ジョルジュ独自の料理の世界を創り上げているのではないかと思います。
 私も他の色々なレストランに行った際、辛みとは異なる独特なスパイスを使ったメニューと出会うことは結構ありますが、当店のように辛さをしっかりと感じられるソースを提供するフレンチはあまり無いと思います。
 アメリカは多国籍のイメージがありますが、とりわけニューヨークは色々な国の特徴を融合した料理を提供するレストランが多くあります。
 フレンチ・シェフとして、ジャン・ジョルジュは異色だと思いますし、フランス人がアジアの食材やスパイス、ハーブを使ったフレンチを提供しているということ自体珍しいことですが、ジャン・ジョルジュが自らのステージとしてニューヨークを選んだのもそういったことが理由ではないかと私自身思っています。

供される料理に対するこだわりについてお聞かせ下さい。

 スパイス、ハーブに関しては香りや辛みが大事だと思いますので、その特徴を最大限に感じて頂ける状態で料理を提供しないとダメだということです。
 インフュージョンというお茶のようにハーブの香りを抽出する方法があります。
 注ぎたては非常に良い香りがするのでそれを料理に用いることがありますが、ハーブだけでなく野菜や柑橘類をミックスしたものに熱湯を注いだり、スパイスの「香りが良く立つ」状態のタイミングに関しては、特に当店の料理において大事にしているところです。
 そこに付随して、香り、辛み、酸味、食感を追求しています。
 いずれも料理の世界で当たり前のことかもしれませんが、ジャン・ジョルジュの場合はさらに料理ごとに際立たせる要素がはっきりしているのが特徴的と言えます。
 どちらかと言えば起承転結というストーリーよりも、最初から驚きのあるする料理が出てくる、メリハリのあるコースを提供するレストランであると言えばわかりやすいかもしれません。フレンチとしてはかなり珍しい部類に入ると思います。
 フレンチの場合は一般的に時間をかけてコンソメを作るとか、ワインを煮詰めてソースを作るといったように時間と手間がかかる調理法が多用されるといった印象ですが、ジャン・ジョルジュの料理は、アジア各国の調理技法に影響を受け、色々な素材やスパイスなどを合わせ、一瞬にしてびっくりするようなソースに作り上げてしまうという手法が数多く用いられています。
 クラッシックなフレンチのソースにスパイスを合わせるというのではなく、ジャン・ジョルジュの料理にジャン・ジョルジュのソースを合わせるという表現が適切かもしれません。


店されるお客様に対してシェフとして心掛けておられることは何でしょうか?

 フレンチ・レストランということでご予約され来店された方がメニューの内容を説明するとびっくりされることもあります。
 最近では事前にネットなどでリサーチしてご来店される方も多いので、WEBサイトでも紹介していますが、特に初めてご利用されるゲストへのプレゼンテーションとコミュニケーションは当店の料理を楽しんで頂く為に必須であると考えています。
 お越し頂いたゲストには、料理が出された瞬間と口に運んだ瞬間、そして喉を通過した後の味の余韻など、それぞれの過程ですべて変化するような食の演出を感じて頂ける調理を心掛けています。
 そこに必ずスパイスやハーブが無ければならないということでは無いのですが、より幅広い変化を楽しんで頂けるための役割であると思っています。
 さらに、そこに組み合わさる柑橘類についても私自身一種のスパイスである、と捉えています。果汁の酸味が加熱温度などによって皿の中で変化するところに魅力と可能性を感じています。
 また、当店はカウンター越しに一望できるオープンキッチンの客席がメインとなっているので常に丁寧かつ綺麗な仕事をするよう心掛けています。
 一例ですが、本店を始め世界各国の店舗で共通しているルールとして、味見用の使い捨てのプラスチック製のスプーンを常時用意して使っています。
 これに関しては、現在世界規模で脱プラスチック、プラスチックゴミ削減が叫ばれている中で早急に改善すべき課題であると思っていますが、ジャン・ジョルジュの安全性と衛星を保つという意味でのホスピタリティと言えます。

パイス、ハーブに関する国民性についてはどのように思われていますか?

 スパイスに対する国民性の違いは大いに感じています。
 油で抽出できるもの、水に抽出できるものなど世界中にさまざまなものがあります。同じアジア圏でも、国が異なれば料理も調理法も大きく変わります。
 
 現在一緒に働いている外国人スタッフが私達と同じスパイスを使って調理する場合でも味わいや、組み合わせが違い、興味深く思っています。

パイスを調達する上で苦労されていることはありますか?

 現状の課題として感じていることは、どういうところからどのようなスパイスが調達できるかということをもっと知りたいということです。
 ハーブや野菜類に関しては日本でも美味しい色々な種類のものが数多く生産され流通していますが、スパイスに関しては我々のようなレストランが直接輸入することは、ロットの面から見ても難しいケースがあります。
 既存の日本国内の流通ルートだけでは限りがあるので、スパイスを探す際に苦労されている方も多くいらっしゃるのではないかと思います。
 当店でもメキシコ産の唐辛子が色々使えれば良いと思います。唐辛子は世界各国で様々なものが存在しており、取り扱う商社は日本にも数多くありますが、もっと色々なものが少ロットで入手出来れば嬉しいです。
 中には輸入規制されているものもあるため、個人調達は可能かもしれませんが、フード・ビジネスにおいて難しさを感じています。
 今期待していることは、新しい色々なスパイスやハーブ、調味料とそれを扱う商社などが容易に見つけられ入手出来るようになれば有難いと思います。
 日本でも全日本スパイス協会などが結構力を入れて取り組まれており、大手メーカーや商社では色々と宣伝をされているという認識もあるのですが、自分がまだ知らないレアなフレッシュなスパイスを取り扱っている商社と出会える機会が今後あれば有難いです。
私自身も個人的にインターネットで検索したり、都内各所にあるいわゆる「アジアン・ストリート」的なエリアに行った際、そこに集まる国々でしか見られない珍しいスパイスを見つけることがありますが、ビジネス使用するには条件が合わないことも多々です。
 私も長年料理の世界に携わっていますが、外国のシェフが日本に持ち帰ってきたスパイスやハーブは同じ名前でもやはり異なります。
 海外で出会ったさまざまなスパイスを日本に種を持ち帰り畑で育てたりしている人もいますが、そこにも法的な縛りがあるので全てが揃っているとは言えません。

月シェフはスパイス、ハーブなどはどのようにして探されているのでしょうか?
また、その仕入先はどうやって決められるのでしょうか。

 つながりがあるシェフ仲間の情報や特殊なものはインターネットなどで探すこともあります。付き合いのある八百屋や乾物業者に聞いたりして情報を仕入れることもあります。
 使用量が少なく、少ロットで済むものは現金購入するケースもありますが、全社的に使用量が見込まれるものについては会社を通してまとめて購入しています。
 新たなスパイスの開拓と仕入先の選定は、会社に対してもこれだけ必要だからとプレゼンテーションして理解してもらう必要があります。
 同じ種類の魚や野菜、ハーブでも個体差があるからこそ面白く、 特にハーブは採れたてのフレッシュで元気があるものは香や味が全然違います。
 今、ハーブに関しては日本でもかなりの種類が栽培されていて市場でも入手でき、まれに無い物を除き、普段はほとんど国産のものを使用しています。

ロナ禍において新たに取り組まれたことはございますか?

 このような時期なので営業再開までの期間、テイクアウトや料理人として今までと違うことに取り組もうと言うことでスタッフと色々話をしてきました。
 日本ではスパイスが持つ薬膳の効果は余り知られていません。例えばウコンも薬の一つとして使われたりしていますが、そのような普段使われているスパイスが持つ健康面での効果を前面に出して「身体に良い料理」としてアピールできればもっと幅が広がるのではないかと思っています。

回HCJ2022では「スパイス」をクローズアップした企画展示を予定していますが、参加予定の企業や本展示会全体に対する期待・要望があればお聞かせください。

 一般的にスパイスというものは、家庭用を含めて一度に大量に使われるケースは少ないので、少ロットでもう少し気軽に取り入れられるようになれば良いと思います。
 毎日のように頻繁に使用するのであれば良いのですが、賞味期限が切れてしまうため欲しいけど手が出せないものも往々にしてあると思います。
 スパイスを効かせて煮込んである料理は世界中に無限にあるところも非常に面白いことです。
 カレーにとどまらず世界の色々な料理にチャレンジできるように、色々な料理に合わせられる使い切りのスパイスのセットのようなものがあっても面白いかもしれません。
 HCJはさまざまな企業が集う展示会であるので、毎回新たなサプライヤーや人との出会いへの期待があります。
 次回のスパイス&ハーブの企画では、私がまだ知らない新しいスパイスや新たな業者さんとの出会えることに期待しています。

ありがとうございました。

ジャン・ジョルジュ トウキョウ
エグゼクティブシェフ
望月 良一

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