宿泊業のスマート化研究会2023

第4部
「個人情報を制する者は観光を制す?!」

「地域連携促進分科会」の第3回目は、メーカー・ベンター様にお願いしていた、事前課題「2030年を目標とした将来的に実現したいコンセプトモデル」をもとに情報とアイデアの共有から、ディスカッションを展開していきます。

ディスカッションは未来ビジョンを実現するためにクリアしなくてはならない「壁・ハードル」を表面化して、解決策(アイデア)を探っていくのが目的です。

今回も進行役は東洋大学の国際観光学部准教授である徳江先生が務めます。

参加企業 ※順不同、法人格省略

構造計画研究所

コプロシステム

いせん

紅鮎

リゾートトラスト

新井旅館

ホテルおかだ

デジタルの活用によるスマート化のヒントは他業種にあり!

会場風景

プレゼンテーションの前段に議論のカンフル剤として実施いただいた東洋大学の学生の皆さんからのプレゼンテーションでは、他業界で活用されているデジタル技術から得られるヒントについて、学生ならではのフレッシュな考えが提示されました。

  • 医療機関では電子カルテやデータ主導の意思決定プロセスの導入
  • 教育機関では学習データを元に分析した学習ソフトの導入

など、はっとさせられる内容でした。
ビジネスがこれまで以上に賢く、効率的に、そしてより密接につながるようになるための貴重な洞察を提供してくれました。

これに対し徳江先生からは以下のコメント

「学生など若い世代では、大人がギャップを感じるほど、スマホのキャッシュレスのサービスを使用している人は多いとおもいます。少し前までは異なったやり方をしていましたが、学生のたちのプレゼンテーションをみてみると、これだけ世の中のスマート化が進んでいることがわかると思います。そして、宿泊業でもスマート化できることがたくさんあるのではないでしょうか。」

東洋大学の学生プレゼンテーションの後は、研究会に参加しているメンバーから製品・サービスのプレゼンテーションへ

各グループのプレゼンテーション

会場風景

前回の講義では、2030年に宿泊施設と観光資源の関係性について、理想や願望について議論しました。

今回の議論の中心となるのはメーカー・ベンダーさまが発案する以下項目を軸とした「空想パンフレット」です。

空想パンフレットとは、下記の5項目をまとめることで、まだ空想上のコンセプトモデルを具体的に表現し、顧客やユーザーにコンセプト段階でのフィードバックをもらうこと目的に作成するものです。

  • 実現するビジョン
  • 解決する課題
  • 具体的な提案
  • 自社の優位性
  • 顧客への提供価値 顧客のベネフィット

プラットフォームによるあらゆる宿泊体験を一元化!

来場者管理システムを提供されているメーカー様から、システムを活用した予約・決済・受付を一つのポータルで一元化する提案です。

プラットフォーム上に「マイページ」を設け、宿泊にまつわるアクティビティや食事、記念品などのデータを精査し、手続きの段階でそれらの予約を可能に。

さらに、2030年には顔認証を導入し、現地に到着した際に気兼ねなく受付ができるようにしてスマート化を図る内容です。

また、街や拠点、宿泊施設などと連動したARやVRコンテンツの創出する計画も。過疎化が進む地域に人を呼び込む狙いもあるそうです。

ICTを活用したホテル事業の自働化・効率化

宿泊事業向けのスマートロック、管理システムを開発されているメーカー様からは、ICTを活用したホテル事業の自働化・効率化が提案されました。

オンラインでのチェックイン手続きとスマートロックのアプリケーションの連携を強化し、限られたリソースで鍵の受け渡し問題を解決、ホテル業務の効率化を目指す内容です。

「さらに将来的には個人と紐づいたQRコードを時限式の鍵として使うことで、有益な情報を提供したり、地域を盛り上げたりすることができるようになるかもしれない。それを実現するためには、マイナンバーカードの活用も視野に入れながら進めていきたい。」

とアイデアについての補足も。

フロントに人が立たないホテルを目指して

完全に人がいないフロントを目指すという提案も提示されました。この目標を達成するには、事前決済を導入する必要があります。
また、現金を扱うことが、いちばんコストがかかるので、できれば現金は扱いたくない。こういった理由も、事前決済のメリットに挙げられました。

機会的に現金の取り扱いを無くす自動精算機は人件費の削減にはつながりますが、導入には多額の資金が必要。そのため、個人の宿泊施設では、負担が大きいという状況があるようです。

果たして地域ごとに存在するサービスを一元化できるのか

会場風景

メーカー・ベンダー様が提案した「空想パンフレット」に対して、以下のような質問が飛び交うこととなりました。

「地域ごとにアプリやサービスが存在してしまうため、普及することがない」
「地域ごとに開発しなければならない実情もある」
「普及を目指すのであれば全国で一括して実施すべき」

プラットフォームというものは多くの人に使ってもらう事が普及につながるので、やるのであれば全国で統一して実施をするべきという意見も出ていました。

プラットフォーム一元化による障壁と解決は?

発表後は、空想パンフレットに対してのディスカッションです。プラットフォームの一元化について焦点を当てた議論となりました。

プラットフォーム統一の可能性については周知・認知度の以外に、決済に大きなハードルがあるようです。具体的には以下の事象があげられました。

  • 宿泊施設が決済情報を事前に取得できる場合とそうでない場合がある
  • 情報セキュリティ(安全な運営)していけるのか
  • プラットフォームの導入コストの問題

これらを解決するには、既存の決済サービスなどと提携するともっとも安全なのではないかという意見も出ていました。

個人情報をもとにサービスや情報提供は可能なのか

今日一番の熱い議論となったのは“プラットフォームの一元化によるメリットと、個人情報の取り扱い方法”です。

メーカー・ベンダーから提示されたコンセプトモデルでは、宿泊客の個人情報をもとにサービスや情報提供に役立てていきたい、との考えがありました。

ですが、これを実現するには個人情報の扱いについて多くのハードルがありそうです。具体的には以下のような意見が集まりました。

  • プラットフォームを開発するうえでどこから情報をもってくるのか。
  • 情報がないと旅のサジェスト機能を含め、そもそものサービスがつくれない
  • 宿泊者に事前に情報提供を求めるにしても、嗜好性が判断できる情報の入力を求めることは難しい

これについては、
「マイナンバーカードの活用の幅が広がることに期待したい。
運営側の視点で情報を集約するプラットフォームを構築できれば、宿泊者の個人個人の要
望も可視化ができるかもしれない。」
という意見も。

マイナンバーカードの情報と顧客情報を紐づけることができると、性別、年齢、等を含めた個人の嗜好などの情報と連携し、顧客個々別々にレコメンドが実現できるかもしれません。すると、宿泊客とその周辺施設を結ぶ提案もでき、その結果、周辺地域の活性につながるのではないかという未来ビジョンが見えたところで、本日のディスカッションは終了となりました。

総括:宿泊業においての個人情報の扱い方を考え、解決していくことが研究会の目標

会場風景

今回の研究会で浮き彫りとなったのは、“個人情報の取扱い”についてです。徳江先生もこれに関し、以下のようにコメント。

「個人情報を慎重に扱わなければならない時代になっていることがよくわかりました。機密情報をどのように管理するかは、その都度考えなければならないと認識しました。」
「しかし、ネットで買い物をするとき、お薦めの商品を教えてもらうことがあります。それはどこから来て、許可されたものなのでしょうか?」
「ネットショップで扱うものは”物”であるため、この違いはとても大きいですが、解決できなくはない問題です。」

個人情報の取扱いに関しては、クリアしている業界もるので、他業界のサービスモデルを参考に、宿泊業の個人情報の取扱いの課題をどのように解決していくのかが、今後の研究会のテーマになってくるでしょう。

東洋大学 国際観光学部 准教授
徳江 順一郎(とくえ じゅんいちろう)

■上智大学経済学部卒業、早稲田大学大学院商学研究科修了。
大学院在学中に起業し、飲食店の経営やマーケティングのコンサルティング、内装デザインの事業等を手掛ける。2011年に東洋大学国際地域学部国際観光学科に着任。ホスピタリティの理論科目、ホテル経営関連、ブライダル関連の科目を担当。
■専門分野:ホスピタリティ・マネジメント、経営学、商学
■著書・論文等:『アマンリゾーツとバンヤンツリーのホスピタリティ・イノベーション』 『ホテルと旅館の事業展開 [創成社]』『ホスピタリティ・デザイン論 [創成社]』 『ホスピタリティ・マネジメント[同文舘出版]』 『ホテル経営概論[同文舘出版]』等 著書・学術論文多数

徳江 順一郎氏

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