宿泊業のスマート化研究会2023

第1部
「宿泊施設の顧客体験価値とは何か」

第1部「宿泊施設の顧客体験価値とはなにか」

テクノロジーによるビジネスの変化は大きなうねりとして、世界中のビジネスを大きく変えようとしています。デジタルを中心とした様々なテクノロジーサービスの品質・コストに大きな影響を与えています。
宿泊/観光業界では、新型コロナウィルスによってより顕在化した、慢性的な人手不足と。国策として期待されるインバウンドをはじめとする観光客の顧客体験価値向上が大きな課題となっています。
HCJ三展合同事務局では、観光立国という日本の成長ビジョンを実現し、宿泊業界がサステイナブルな経営活動を持続していくために、昨年に引き続き宿泊業のスマート化研究会を開催します。

スマート化研究会では、様々なテクノロジーと先進的な取り組みを研究し、参加者の業界プレゼンスの向上のみならず、メーカー・ユーザー・大学・研究機関を“つなぎ”。新しい価値を共創していく場として、実施していきます。

スマート化研究会、第1回目は“今年の進め方”を議論

2022年7月4日、今年度の宿泊業のスマート化研究会第1回が開催されました。
宿泊業界が抱える課題の解決に向け、初回から白熱した議論が繰り広げられました。

ファシリテーター役を務めるのは、東洋大学国際観光学部准教授の徳江順一郎先生。
複数の宿泊施設、メーカー、大学・研究機関の参加者と共に、議論・実証実験を重ね、スマート化を軸とした「未来における宿泊業のあり方」を考えていきます。

参加企業 ※順不同、法人格省略

ソニーマーケティング

三菱電機

aipass

ソラーレホテルズアンドリゾーツ

構造計画研究所

ネットフォレスト

りそなカード

いせん

大和ハウスリアルティマネジメント

伊勢屋

コプロシステム

相鉄ホテルマネジメント

リゾートトラスト

東洋大学

初回である今回は「宿泊施設の顧客体験価値とは何か?」「顧客体験価値を最大化するために、具体的にどんな施策が考えられるか?」について、オンライン参加者・学生含め合計24人が4グループに別れワークショップを実施。
今年度の研究会をどのようなテーマで進めていくのか。ファシリテーターの徳江先生の辣腕で、ぐいぐいとまとめていきました。

研究会は刺激的な講演からスタート「サービス経済から経験経済の時代へ!「品質・価格」から「感動・魅力」に?!」

会場風景

まずはイントロダクションとして徳江先生から、スマート化研究会の方針と、顧客体験価値向上がいかに重要か、時代背景から顧客体験価値とは何か?を改めてその定義について解説。

「現代の消費者は安くて品質が良いというだけでは評価してくれない。感動や魅力という価値がなければ、対価を支払ってくれない。」ということを前提とし、「技術をどう活かして『文化・感動・魅力』に繋げていくことを考えるのがこの研究会においては重要だと考えている。」と説明。
本研究会における顧客体験価値という言葉の意味と位置づけを、参加者たちと共有・認識合わせをしました。

徳江先生のイントロダクションの一部を紹介します。
顧客体験価値の例題として「豆腐」を挙げ、消費者はどこに価値を感じるか解説をいただきました。

「ビジネス(豆腐)を提供する価値として、仮に同品質の食材を食べるとしても「体験」という付加価値によって、金額は変わります。例えば、豆腐はスーパーで100円程度で売られているが、京都東山の料亭の湯豆腐だと数千円、都内某所の豆腐屋のランチで食べると、7,700円にもなります」

「金額の差が生じるのは、消費者がどこに価値を感じ、金額を支払うかの差。例えば京都で数千円支払って豆腐を食べるのは地元の人ではなく、旅行者がほとんど。そのような人たちは「嵐山で豆腐を食べる」ということが、京都という地域に蓄積された歴史や伝統に接するという体験であり、そこに価値の重きを置いているからです。」

今になって顧客体験価値の重要性を説いているのは、マーケティングの力点が「品質・価値」から「感動・魅力」の方向に移り変わっている背景があるからだそう。

「背景をさかのぼると、高度成長期では安くて品質の良い製品やサービスを提供していくことが大事と言われていました。

しかし、効率化を推し進め、経済的・機能的価値を追求した結果、提供する製品やサービスが次第に同質化してゆき、価格で勝負する状況になってしまった。」

「品質は良いが、効率化を優先してしまったが故の消費者に選んでもらえない結果に。こういった背景から差別化を図れるのが、機能や利便性ではなく、経験に話が向いてきていると言えます。」

「マーケティングの力点が「品質・価格(技術)」から「感動・魅力(文化)」の方向に移り変わっていった。別に技術がだめということではなく、技術を活かし「文化・感動・魅力」に繋げることを考えるのが、この研究会において非常に重要です。」

徳江先生のイントロダクションの後はこの話を踏まえ、4チームに分かれて「宿泊施設の顧客体験価値とはなにか?」について考えていきます。

各グループのプレゼンテーション

続くグループワークでは、前半の先生の講義を参考にしながら、各チームに分かれ宿泊施設の顧客体験価値を向上させるためにホテル側ができることは何かについてディスカッションへ。

「宿泊施設の顧客体験価値とは何か?」「顧客体験価値を最大化するために、具体的にどんな施策が考えられるか?」という問いに対して、各チームの議論が進んでいきます。

ディスカッションでは、地域と宿の相関性、ターゲットによって異なるプロモーション方法、施設として提供できる非日常感についてなど、様々な課題やプロモーション方法が挙げられていました。

ここからは各グループでの議論の一部を紹介させていただきます。

会場風景

宿泊施設、メーカー6社で構成されるチームでは、様々な視点の考え方や意見が議論され「宿泊施設の周辺にある特別感のあるコンテンツを繋げて演出できれば、価値の提供・向上ができるのではないか」という提言をまとめます。

話の主題となったのは“宿泊施設の周辺にある特別感があるコンテンツを、宿泊施設と繋げて演出できると、価値の提供ができるのではないか”というアイデア。

課題として・・・
“地域づくりと宿の相関性がわかっていない関係者が多い”
“地域と宿の連携がとれていないので、世界観がつくりきれていない”
という意見が挙げられました。

顧客体験価値向上という観点においても、町と宿泊施設を繋げていくのは今後重要なポイントとなりそうです。

会場風景

お客様が何を楽しみに宿泊施設に訪れるのかをメーカーメンバーで洗い出すところから始めたチームでは「そこでしか体験できない非日常感、日常の趣味の時間をフルに使える場所として提供できるのが価値の向上に繋がるのではないか」と提言。

顧客の楽しみとして、“料理・温泉等いつもと違う非日常感の体験あるのではないか”という意見が挙がります。
これに対し宿泊事業者側は、温泉や料理含めた期待以上の体験と感動を提供したいということに重きを置いていることが明らかになってきます、しかしホテルの中の顧客価値体験については、ホテル側でも工夫はしているものの、現実は暇つぶし程度にしかならない等、体験価値創出については課題がある様子。

そこで、このチームでは、ホテル側の感動してほしい意識に対して、いままでホテルで経験した感動体験について意見交換をスタート。下記の様な意見が出てきます。

  • 普段は準備したことのない/できない材料・食材を使って自分で料理等をつくる体験
  • 建物だけでなく、森ごとホテルになっているホテル。
  • 敷地内の自然でできる体験。

共通するキーワードとして、「そこに(で)しかできないこと」「非日常感」「日常の趣味を」がありそうです。
このような議論から、泊まる場所の提供という枠から外れた、体験価値創出の為の斬新なアイディアが飛び交う活発な議論に発展!下記に箇条書きにて紹介します。

  • 周辺地域と連携するというところから、ホテルでしか見られない映画を制作すること。
  • 「地域が舞台」の映画をつくることによって、そのホテルや周辺地域を目的としたお客様を呼び込む。
  • 映画では、周辺の食堂や、観光名所を撮影地として採用。地域を映画の聖地化にできれば、集客につながるのではないか。
  • 地元の人しか知らないようなスポット。例えば、夜景がキレイな場所だとか、ホタルがみれる場所とか、地域の魅力を出すことによって、ブランディングにも繋がりそう。
  • 地元の鉄道とかも出していけば、マニアもくるし、より幅広い映画にすればするほど、幅広い人がくる(集客)に繋がるのではないか。

「そこでしか体験できない非日常感、日常の趣味の時間をフルに使える場所として提供できるのが価値の向上に繋がる。」これを形にする具体的なアイディアが多く飛び出しました。
メーカー・ユーザーの議論から的確な“問い”が生まれたことで、アイディアがあふれ出る展開は研究会ならではです。

会場風景

続いて次のチームでは「宿泊で提供できる価値で重要なポイントは3つある」と指摘。

1つは「ホテル単体、設備としてお客様によい体験を届ける」ということ。
例えば、A施設では想定ターゲットが出張者のため、ニーズに合わせて施設の設備を揃えているそうです。
リモートワークでの利用も想定し、デスクは少し広めに。寝るときは仕事の疲れが癒せるようベッドも広めに。
地域性の面では、その土地にしかない食材をつかった朝食を用意することで、非日常感を演出しているそうです。

2つめは「周辺施設への誘導」
宿泊体験をホテル内で完結させることだけでなく、地域へと広げていくというコンセプト。
アプリを活用しホテルを出た後の周辺案内をしてあげる。コンシェルジュ的な立ち位置をデジタルテクノロジーで補うことで、旅行者様に親切かつ、非日常的な体験を提案出来るかと思います。

3つめ「従業員の負担を減らすこと」
先のふたつがメインですが、従業員の負担を減らすのも大事だ、との意見も。

従業員の労働力に着目したのはこのチームのみでした。お客様と一番近い距離にいる従業員さんの負担を減らすための効率化や、モチベーションの向上をさせてあげることで、接客のパフォーマンス向上を図り、顧客満足度に繋げるといった考えでした。
多様な参加者から、研究会に多様な視点を供給します。土台となる第1回でこのような議論が出てきたことは大変意義深いと感じます。

次のチームでは顧客体験価値を「わくわくするもの面白いもの、自分では見つけられない意外性との出会い」定義。

会場風景

こちらのチームでは、お客様の顧客体験に2つの方向性があるという話に。

お客様が旅行に求める体験は、“ワクワクしたりするなど感情的な部分”にあるのではないでしょうか。コロナ禍でエンタメの要素が少なかった中で、これからの旅行でいかにワクワクや面白さを提供できるかが非常に重要。

ただ、お客様がホテルや地域でどういう体験ができるところまでは、はっきりイメージできてないケースが多いのではないかと思っています。なので、体験のイメージは、宿側が提案していく必要がある。

意外性や、知らないものと出会うことで、感情が揺さぶられて満足度につながる。

顧客体験を上げていくのは、“ワクワク”・“意外性”。
ただ知らないものとの出会いも、ある程度プランニングされている必要があるという意見も。

自分が感じる面白くて、意外なものは、他の方ではそうではないケースが多々あります。パーソナリティに応じて、意外性の演出だったり、良いと思って頂けるものを提案していくことで顧客体験の向上に繋がるのではないでしょうか。

もう一方で顧客体験を毀損せずにスムーズに楽しんでいただく。負に寄せていかないというところも話の1つとして挙がりました。

新しい体験、知らないものとの出会いを、いかにスムーズに、お客様に苦労をかけずに、宿泊施設にも無理なく提供していくのも同時に考える必要がある。

顧客体験価値を意図的に上げていくことと、スムーズにしていくものの2つについて議論をすすめていました。

宿泊施設の顧客体験価値の最大化に向けた障壁と現状とのギャップ

各チーム、顧客体験価値の向上において様々な意見と気付きが出てきました。
一方で、実現させるための障壁と克服しなければならない課題も山積している様子。

第2部では、第1部で出てきたアイディアを踏まえ、「宿泊施設の顧客体験価値の最大化に向けた障壁と現状とのギャップ」について考えていきます。

記事制作

株式会社ネクストレイト

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東洋大学 国際観光学部 准教授
徳江 順一郎(とくえ じゅんいちろう)

■上智大学経済学部卒業、早稲田大学大学院商学研究科修了。
大学院在学中に起業し、飲食店の経営やマーケティングのコンサルティング、内装デザインの事業等を手掛ける。2011年に東洋大学国際地域学部国際観光学科に着任。ホスピタリティの理論科目、ホテル経営関連、ブライダル関連の科目を担当。
■専門分野:ホスピタリティ・マネジメント、経営学、商学
■著書・論文等:『アマンリゾーツとバンヤンツリーのホスピタリティ・イノベーション』 『ホテルと旅館の事業展開 [創成社]』『ホスピタリティ・デザイン論 [創成社]』 『ホスピタリティ・マネジメント[同文舘出版]』 『ホテル経営概論[同文舘出版]』等 著書・学術論文多数

徳江 順一郎氏

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