宿泊業のスマート化研究会2023
第13部(研究会全体会3)
最終回、結果報告とこれからにむけて・・・!
第2部(第1回ホスピタリティDX分科会) 「施設の“ナカ”のスマート化を考える分科会開催」
第3部 (第1回地域連携推進分科会)「宿泊施設の顧客体験価値の最大化に向けた障壁と現状とのギャップ」
第4部(第2回ホスピタリティDX分科会)「施設の未来像からバックキャストする」
第5部(第2回地域連携推進分科会)「地域と施設とイノベーションと」
第6部 (第3回ホスピタリティDX分科会)「実現の為のハードルは?課題克服の方法議論」
第7部(第3回地域連携推進分科会)「個人情報を制する者は観光を制す?!」
第8部(研究会全体会2)「展示に向けた具体化を開始!ユーザーと共に刺さる提案を検討」
第9部(第4回ホスピタリティDX分科会)「未来の展示につなぐ情報発信を考えた(ブース内セミナー検討)」
第10部(第4回地域連携推進分科会)「ここだから、ミニサイズだからできるリアルなセミナーを!(ブース内セミナー検討)」
第11部(第6回ホスピタリティDX分科会)「展示内容決定・共有!、さらに来年に向けて・・・」
第12部(第6回地域連携推進分科会)「地域連携分科会も展示内容が決定! 次年度に向けてスマート化を再定義!」
第13部(研究会全体会3)最終回、結果報告とこれからにむけて・・・!
第14部(展示レポート)「宿泊業のスマート化研究会をレポート!」
番外編「未来のクリエイターとコラボレーション「日本工学院」との取り組み」

最終回は、展示会の振り返りと、これまでの議論のレビューをメインに行っていきます。
参加企業 ※順不同、法人格省略
りそなカード
コプロシステム
いせん
構造計画研究所
メズム東京
ソラーレホテルズアンドリゾーツ
ホクリョーリード
紅鮎
大和ハウスリアリティマネジメント
ソニーマーケティング
東急リゾーツ&ステイ
新井旅館
展示会データ
展示会全体の来場人数

まずは今回研究会の母体でもある、HCJ全体の振り返りからスタート。
来場者数は前年と比べ大幅に増加。
コロナ禍の昨年と比較して今年度は163.9%という数値。2019年(コロナ禍前)の62,885名と比較して、73.8%まで回復しています。
中でも、宿泊業スマート化研究会は高い注目度をいただき、データでは全体の約13.81%(6,415人)の来場者の方に足を運んでいただきました。
全来場者のうち宿泊業種は、今年はリゾートホテルの来場者が最多となり。地域で見ると関東/東京の一極集中が若干の緩和傾向にある等の変化が見られました。

また、研究会ブースを見に来ていただいた来場者のインサイトを見てみると、上図ようなワードに関心が高く、新しい製品・サービス、新しい課題を予見する方が多くご覧になったという状況です。
これらのデータを参考に、展示&研究会の振り返り
上記、展示会データの共有後、宿泊業のスマート化研究会の展示並びに、これまでの研究会会合について、5チームに分かれ振り返り議論が行われました。
以下の軸に沿った内容で考えがまとめられています。議論の後は、各チームの発表へと移ります。
1. 展示
1. 取引先につながる(つながりそう・つながった)反響・出会い等があったか
2. 協力関係(パートナー)のきっかけにつながる反響・出会い等があったか
3. 製品開発(改良)のきっかけにつながる反響・出会いがあったか
2. セミナー(トレンドセミナー会場にて実施)
1. 実施後の反響
2. セミナー実施時の気付き
3. セミナーを通じて人脈を広げられたか
3. ブース内ミニセミナー
1. 実施後の反響
2. セミナー実施時の気付き
3. セミナーを通じて人脈を広げられたか
4. その他展示会場内で発見した事等
1. 展示会場内での発見、出会い等で有意義なもの・印象的なものがあったか
2. 研究会の取り組み(展示会に限らず)を通じて有意義なもの・印象的なものはあったか
5. 宿泊業のスマート化を進めていくために
1. どんな取り組みが求められると思うか
2. 今後展示会内(研究会も含め)でどんな取り組みがあるとよいか
展示の印象、交流の成功、そして今後の課題と展望

こちらのチームは特に「1.展示」と「5.宿泊業のスマート化を進めていくために」に焦点が集まりました。以下はその概要です。
1.展示について
研究会全体を振り返ると、広いスペースが解放感をもたらし、人の出入りも多かった。
ただ、ベンダーや宿泊事業者がより関与した世界観づくりができれば、研究会としての発表が充実したものになったかもしれないという意見も。
また、各社が様々なソリューションを展示しているため、色々なフックで話が聞けたのは良かったというメーカー・ベンダー様もいらっしゃいました。
ただ、展示されているソリューションが宿泊業特化型ではなかったため、今後は業界に対する理解を深めたソリューションの訴求が課題として提言されています。
5. 宿泊業のスマート化を進めていくために
今後の課題としては、各社のソリューション紹介に注力しすぎた部分があったため、宿泊業のスマート化のビジョンを研究会の成果として訴求できたかという点で改善が必要。
また、自治体や国のDX推進と実態が一致していない場合があるため、研究会が大上段の提言を継続することで研究会色を出すことに期待が集まり。
技術革新とソリューション統合への取り組みと事業者・ベンダー間の意見共有の重要性

Bチームでは主に「1.展示」「4. その他展示会場内で発見した事等」「5.宿泊業のスマート化を進めていくために」について以下のような意見がまとめられました。
1.展示会について
展示会では、自治体向けサービスが宿泊事業者以外の関係者にも興味を持たれることが良かったとの意見がありました。
また、ミニセミナーでは、学生や教授の参加によってビジネス色が薄れ、よりフランクな交流ができたので良かったという声も。
4. その他展示会場内で発見した事等
ロボットやクラウド、VRなど、ホテル業界の課題に対応する技術が増えてきた印象を感じたようです。ただし、まだ完成度に課題がある製品が多く、議論が必要だとされました。
5. 宿泊業のスマート化を進めていくために
研究会ブースでは、個々のサービス展示が主であったため、「一つのソリューションを全体で作り上げる方が研究会としての色も出せたのでは!」とアプローチの仕方についての提言がありました。
補足として、研究会のブースではベンダー、サプライヤー、事業者が直接会話できる重要な場であったという研究会に参加してこそのご意見も。
展示会自体ソリューションの提案がベースなので、事業者側からベンダーへのフィードバックや意見共有ができるような場として研究会ブースの貴重性を提言していただきました。
課題認識と効率化の重要性、未来志向の発想で業界進化へ

Cチームでは、企業間の交流やミニセミナーを通じて、業界の課題認識や効率化、人手をかけるべき場所の重要性が共有されました。
また、未来志向の発想や海外のホテル業界のやり方を取り入れながら進化させることが求められました。
主に以下の意見が挙げられます。
1.展示について
展示会では、多くの企業と短期間で交流ができ、新しい出会いや商談に繋がる成果が得られたという企業様もいらっしゃいました。
3.ブース内ミニセミナーについて
ミニセミナーでは、参加者が人手不足やDXに関心があることがわかりました。また、シティホテルとビジネスホテルの課題が異なることが明らかになり、それぞれの運営・経営における課題認識に違いがあることが理解されました。
4.その他展示会場内で発見した事等
研究会に参加することで、ホテル側から意見を共有する機会が増え、効率化や人手をかけるべき場所の認識が深まりました。
5. 宿泊業のスマート化を進めていくために
スマート化において、ホテルで働く人たちがストレスなく働けるシステムが重要であるとされました。
しかし、2030年を想定した議論が展示会では現状技術の棚卸に終わってしまったとの意見も。
今後は、未来志向の発想や海外のホテルの取り入れながらホテル業界を進化させていくことが重要だとされました。
来場者の関心と今後の展示・研究会内容の検討

Dチームでは来場者の関心やセミナーの効果などが話題となりました。
また、今後の展示や研究会の内容について、付加価値を提案する観点や各社の繋がりを作る方法について検討が求められました。
主に以下のような意見が挙げられています。
1.展示について
研究会には情報収集を目的として多くの来場者がおり、3回目の研究会展示を迎えて、来場者数が増えた印象があった。
4.その他展示会場内で発見した事等
研究会全体では、各社のソリューションがメインになってしまい、繋がりを作ることが難しかったと感じた。
また、「ラグジュアリー」というキーワードが特定の展示で見られなかった印象がある。一方で、人材育成や教育に関しては今後フォーカスすべきとの意見がありました。
5. 宿泊業のスマート化を進めていくために
スマート化に関しては、「効率化」という認識が多かったが、「付加価値」を提案する観点からは研究会のタイトルや内容を変更することも考慮すべきだという意見がありました。
また、各社の繋がりを作ることが難しかったため、展示の見せ方や提案の見直しを検討することが提案されました。
来場者の関心と展示の工夫、課題と今後の方向性

Eチームでは、宿泊業のスマート化研究会では、最新情報を求める来場者が多く、展示に共感を呼ぶ工夫がパートナー獲得につながったという方も。
一方で、セミナーや展示の検証、再現性や定量的データの不足、スマート化の定義やビジョンの明確化が今後の課題として挙げられました。
1.展示について
研究会では、役職が高い人が最新情報を取得する目的で多く来場していた印象があり、営業がないため手ごたえを感じられた。
また、業界の課題に共感を呼ぶ展示を行った結果、宿泊施設側からの関心が高まり、パートナー獲得につながったという意見が出ました。
5. 宿泊業のスマート化を進めていくために
工学系では定量的なデータに基づく議論が重要ですが、宿泊業界では、再現性や定量的なデータが不足している印象がある。
ただし、宿泊業においてはデータの取得が難しいことも影響しているため、宿泊業のスマート化研究会の活動で実証実験まで進められると良いとの意見があった。
また、スマート化の定義やビジョンを明確にすることが重要だと指摘されました。
総括「これまでの研究会と展示結果を通しての課題感や良かったこと」

「スマートの定義について最初の段階でもう少し議論して、土俵を作っていくべきだったという思いがあります。」
「最初に経験価値を投げかけていましたが、それが抜け落ちてしまった反省点があると感じています。」
また、展示会の意味や意義を十分に共有できていないまま話が進んでしまったのも大きな課題でした。実証実験まで繋げられると、さらに充実した具体性のある展示になると思います。」
「スマート化というキーワードを掲げて進めてきましたが、決まったゴールがないものを皆で探りながら進めてきたと思います。その中でも今期の研究会は大変有意義な時間となったと感じています。
「展示ブースの来場者の人数について、定量的な話も出てきましたが、想定的には6,000人というのは結果として良かったと思います。」
総括として、宿泊業のスマート化研究会は多くの参加者と共に業界の未来を模索し、様々なソリューションとアイデアが展示されました。
確かに反省点も存在しましたが、それらは今後の宿泊業界への取り組みに生かされる貴重な教訓となったと思います。
最終回を迎えたこの研究会は、宿泊業界に新たな可能性を切り開く契機として、記憶に残るでしょう。
これまでの研究会で得られた知見を活かして、より良いサービスと体験を提供することを目指します。
東洋大学 国際観光学部 准教授
徳江 順一郎(とくえ じゅんいちろう)氏
■上智大学経済学部卒業、早稲田大学大学院商学研究科修了。
大学院在学中に起業し、飲食店の経営やマーケティングのコンサルティング、内装デザインの事業等を手掛ける。2011年に東洋大学国際地域学部国際観光学科に着任。ホスピタリティの理論科目、ホテル経営関連、ブライダル関連の科目を担当。
■専門分野:ホスピタリティ・マネジメント、経営学、商学
■著書・論文等:『アマンリゾーツとバンヤンツリーのホスピタリティ・イノベーション』 『ホテルと旅館の事業展開 [創成社]』『ホスピタリティ・デザイン論 [創成社]』 『ホスピタリティ・マネジメント[同文舘出版]』 『ホテル経営概論[同文舘出版]』等 著書・学術論文多数
