国際ホテル・レストラン・ショー企画委員会 副委員長インタビュー

株式会社ロイヤルパークホテルズアンドリゾーツ

常務取締役 営業統括部長 兼 内部監査室長

南 安 氏(左)

運営統括部 次長

長塚 隆 氏(右)

HCJ2019に向けてホテルの課題と解決策
国際ホテル・レストラン・ショー企画委員会 副委員長インタビュー

ホテル業界が抱える課題とは?

それでは、ホテル業界の現状をお聞きしたいと思います。
インバウンドをはじめとしてホテル業界の需要は確実に伸びていますが、人材の確保や育成にかける時間の不足が問題になっていると聞いています。それなのに、これから人口減少で人手がどんどん減っていきます。
その点について現状でどんな危機感や課題をお持ちになっていますか。

南:2006年小泉政権下で観光立国基本法が成立し様々な行政の政策が功を奏し近年の観光インバウンド急増の観光市場環境となり、この市場環境に反応して多くのホテルが2020年を見据えて新規開業を予定しています。
ホテル業界以外からも多数の企業が参入し、宿泊に特化したホテルを次々に建設しています。
客室需要に対して供給不足が続いている環境の中、開業するホテルの清掃や管理に必要な人材の確保が非常に難しくなっているのが現状です。

それと飲食業界も同様にインバウンドの急増に対応し、ホテル内だけでなく、街中のレストランが急増しています。そこでは調理、給仕、食器類の洗浄、清掃などいろいろな人手が必要です。以前から見えていた観光、飲食業界の人手不足が大きな問題に膨れ上がってきているのです。この問題解決のため機械化できるところは機械に移行し、作業工程も全面的に見直して生産性を向上させなければなりません。

従業員の確保はこの問題解決の最重要課題です。ホテルや飲食業界での退職率は高く雇用の確保は以前から大きな課題となっています。業界内での転職までは止むを得ないとして
従業員を他の業界へ出さないようにすることが求められます。

経営者は少なくとも観光産業の外に従業員を出さないようにすることを念頭に置くべきです。例えば、退職を希望する従業員がいれば、他の業界に就職しないように説得し、同業界の中で転職しやすい環境を構築することが必要になってきます。

ホテル業界のロボティクス化進展度とは?

ホテル業界は今、レストランも含めて調理や給仕、清掃などの人材が不足していることから、冒頭で出た機械への投資を進めているのですね。これは既存のホテルでもかなり進んできたのでしょうか。

南:進めていますね。
調理は手で撹拌していたものを機械で行うなど最も機械化しやすい部分です。
作業時間の短縮も狙い、技術が発達してきました。

他にも人の手でやっていたことを機械化するのは、日本の製造業では工場を中心に急速に進んでいます。工場内の技術の進歩は本当にスピード感があります。一方、これまでは接客の部分がなかなか機械化できないといわれてきました。しかし、宿泊やレストランの予約はシステムが入り、IT化することによって、大きく変わりました。以前のように台帳をひっくり返して探すのではなく、パソコンですぐに顧客データが見えるようになっています。これによりお客様へのサービスの時間を多く確保できるようになりました。

予約システムがインターネットの利用でかなり便利になっていることは、われわれユーザーも感じています。ただ、予約以外の接客部分についていえば、機械化しにくい部分があると思います。
次はどういうプロセスをお考えになっているのでしょうか。

南:
機械やシステムに移行できる作業を洗い出せば、いろいろと出てきます。集計や認証、計算などがそれに当たるでしょう。機械に頭脳が備われば、客室のドアをカメラによる顔認証や指紋認証で開けるようにできます。既に実用化段階に入ってきました。チェックインの手続きもインターネットで既に必要事項を取得しているわけですから、機械が顔認証などで本人確認し、荷物もロボットが客室へ運ぶことができます。本来ならベルボーイが同行するべきなのでしょうが、当分の間はロボットで荷物を運ぶユニークさが受けるのではないでしょうか。そして、宿泊客の質問にロボットが答えながらホテルを案内し、客室の施錠、開錠も機械で行うわけです。

例えば、スマートフォンで事前にチェックインができ、その顔を登録していれば、ドアのところで認証するだけでチェックインの煩雑な作業がなくなりますね。

南:全く必要ありません。
過去の進歩としては鍵をカード化したことが挙げられますが、今度はカードも不要になります。以前は4人家族に鍵を2つしか渡せなかったのが、カードに変わって4人分でも5人分でも渡せるようになりました。
顔認証システムが用いられると何人家族であろうが、何もいりません。
扉の前に家族が立って皆の顔を認証させれば良いのです。
家族以外は認証されませんから、中へ入ることができません。カードも鍵も不要な時代が到来したのです。

そちらの方向に業界が進んでいくわけですね。

南:進んでいくのでしょうね。
おもてなしの必要がない部分には、どんどん機械化していけばいいと思います。

個人的にはいいホテルに奮発して宿泊したときは、入り口を入ったら「いらっしゃいませ、●●さま」と迎えてほしい気がします。ちょっと特別な印象も持てるでしょう。
でも、機械化が進むと、何事もないまま中へ入ることになってしまいます。その辺がどうあるべきなのか、やはり議論しているのでしょうか。

長塚:そうですね。
お客様のニーズも多様化してきており手厚いサービスを少々重く感じるお客様もいらっしゃいます。当社ではお客様に合わせた“良い加減”のサービスが重要だと考えています。

ユーザーの変化は確かにあるでしょうね。質が落ちたと思わない環境になってきたということでしょうか。

長塚:ホテルスタッフと距離を置いた接客を好まれる方が最近増えてきているように感じます。

導入を検討するチャットボットとは?

ちょっとだけ突っ込んだ質問をさせていただきますが、今は多くの課題解決についていろいろと調査している段階だと思います。実際の導入が何年ぐらい先になるのかは、ある程度ロードマップを作成しているのでしょうか。

長塚:現時点はいろいろなサービスが次々に登場してきているところです。
だから、どういったサービスが最もいいのかについて勉強しています。
いつまでに導入という計画はまだできていません。

情報を集めているということですが、御社グループ内から情報が届くことがあるでしょう。
独自にインターネットや雑誌を使い、情報収集することもあると思いますが、どんな収集方法を取っていますか。

長塚:今はグループ内から情報提供されることが非常に多いですね。
紹介していただいた先と面談し、サービス内容の説明を受けているところです。

今、集められた情報の中ですぐに実行できそうなものはあるのでしょうか。

長塚:現在は人工知能を活用したチャットボットのAIコンシェルジュを導入すべく実際に動いています。
われわれが導入を考えているチャットボットは外国語に特化したものです。
外国人の方からの問い合わせ対応に今、スタッフが相当な力を割いています。
そこをチャットボットの活用によりお客様を待たせることなく、スムーズなご案内が可能になると考えています。

言葉は英語だけではないですよね。

長塚:汐留のホテルでは先月1カ月間ですが、日本人より中国人の宿泊客が多かったのです。
こういう時代に対応したサービスを積極的に取り入れていく必要があります。

キャッシュレス化に向けた具体的な方向とは?

話が変わりますが、例えばキャッシュレス化などで具体的な方向が出てきていますか。

長塚:今検討を始めているのは、中国のキャッシュレス決済導入です。
これが中国を中心としたインバウンド客増加に対する最も現実的な対応でないかと考えています。

この間の企画委員会でも「さまざまな提案を受けるが、どの決済を導入したらいいのかよく分からない」との声が出ていました。

長塚:どことお付き合いさせていただくかは、一般的に手数料率などをみて選定することになると思います。
ただ、決済手段として利用できるだけでなく、SNSのような媒体を通じて広告宣伝に寄与してくれる企業もあると聞いています。
だから、その辺のサポートが手厚い代理店の方が多少、手数料が高くても良いかもしれません。
どこに重きを置いて選定するかも、これから検討しなければならない課題です。

単純にカード決済だけなら、手数料率で判断すればいいのでしょうけどね。

長塚:現在導入している他の事業者はどちらかというと、そういう宣伝効果を期待しているようです。
拡散力が大きいというのは、利便性とは別の大きな魅力だと思います。
提供しているサービスは、ほとんど変わりがないと思います。
どこが得意で、どういった強みを持つのか、こちらとしては知りたいところです。

今のところ、サービスベンダーからうまい提案は届いていますか。

長塚:われわれが話をさせてもらっているところは非常に有力な相手なので、そういう提案が出てきていますね。

それでは、それぞれの提案内容を比較している最中になりますね。

長塚:協力関係にある企業から、そこが導入した相手を紹介してもらいました。
また、過去につながりがある会社から新サービスの売り込みが来ています。
お話はいろいろなルート経由で進んでいるのです。

業界の中では、「どこそこがいい」という感じで情報が飛び交っているのですね。導入するのなら、ホテルの価値を上げることにつなげたいですものね。

長塚:ホテルの価値を上げる可能性がある媒体を持つ決済手段だと思っています。

最大のリスクとは何か?

長塚:残念ながら日本の方にはキャッシュレスが浸透しにくい土壌が残っている感じがします。

個々の会社からは「信頼性が高い」とか「セキュリティーが高い」という言葉が出てきますが、客観的に比較するのは難しいと思います。最も大きなリスクとして気にするところはどの辺でしょう。
お金のトラブルはもちろん含まれるでしょうが、後はデータの流出辺りになりますか。

長塚:導入するサービスによると思います。
AIコンシェルジュのようなものは、個人情報がサーバーに残ることがほとんどないでしょう。
このため、そういう部分の心配はあまりしていません。
精算の際に銀行に残高がないと何もできませんから、その点も問題ないのですが、会社同士のやり取りになったとき、より信頼度の高い会社を選ばなければならないと思っております。

今のお話はロボティクス化とキャッシュレスでしたが、人工知能ということでホテルが持っているビッグデータの活用を考えていますか。
需要の予測や仕入れの効率化などにも、ビッグデータが有効だと思いますが、どうでしょう。

長塚:その部分も検討に入っています。
そういったマネジメントシステムに人工知能を活用し、新しいサービスを生み出している会社は、何社も出てきました。
まだ具体的に導入という話に至っていませんが、いろいろな会社を紹介していただいているところです。

現在のサービスではすべてを集めて充足させるものはないようですが、将来はレベニュー・マネジメントを機械にすべて任せる時代になるのでしょう。
そうすると、効率化の面ではものすごい貢献をしてくれそうです。
ただ、みんなが同じサービスを活用したら、特徴がいっしょになってしまうため、差別化を図り、お客様から選ばれるホテルチェーンになる必要性を感じています。

ホテルスタッフの仕事はどう変わる?

これからホテルで働く方の仕事が大きく変わるかもしれません。接客時のコミュニケーションなどが魅力で、この業界に入ってくるのでしょうか。

南:今も10人中10人が「人と接することが大好き」と決まり文句でいいますが、それはうそではないと感じています。
今後も接客の側面が消えることはないはずです。
ただ、接客の前面に立つには、ある程度の知識の習得と技術、接客サービスの経験が必要になります。

以前は1、2年の研修体験を通じて誰もが修得していたのですが、今は2年でも長すぎると考えているようです。
長く修行をするようなら、ここにいられないと考え、退職理由の1つになりかねません。
ですから単純な作業にはどうしてもロボットなどが必要になってくるのです。
私たちは単純作業をロボットにお任せして「人と接することが好き」という志望動機を叶えることができる環境を整えることが重要だと思っています。
来年4月には宿泊産業で働くことが外国人の在留資格に加わる見込みです。
在留資格項目になれば、ベルボーイやハウスキーパー、レストランのウエイター、ウエイトレスに外国人雇用が増えるでしょう。

東南アジアの国々は観光立国を目指し、日本へ研修生を派遣したいと考えています。

最後に、次回の国際ホテル・レストラン・ショーにおける「サービス産業向け次世代技術EXPO」および「キャッシュレスTech」への期待をお聞かせください。

長塚:ホテル業界の者としては最先端の話題に触れる機会は少ないと思います。
10年先、20年先の技術かもしれませんが、そういうものに触れられれば大きな刺激になるでしょう。
見たことがあるようなものより、「何だ、これ」と驚かされるようなものの方が何となく面白い気がします。

ものは一緒でもこんな提案は今までなかったというものも興味を惹かれますか。

長塚:そうですよね。
切り口を変えて既存のサービスに新しい活用法を提示してくれるものも驚きになりますね。

本日はいろいろとお聞かせいただき、ありがとうございました。

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