コラム
「外食産業最前線」
感染防止対策を工夫して営業再開。改めて胸に刻んだ「飲食店の価値」 炭火はじめ#5
神奈川・橋本の「炭火はじめ」は、緊急事態宣言が解除になった5月末から営業を再開。営業自粛の期間中、ランチ弁当やつまみ料理のテイクアウト販売で成功を収めた同店は、営業再開においても「ウイズコロナ」に対応する意欲的な取り組みを行っている。
まず、客席のテーブル席には、自ら手作りしたDIYの間仕切りを設置。DIYでコストを抑えることで、一席当たりの間仕切り設置費用は1000円以内におさまった。オープンキッチンの調理場と客席の間には、ビニールシートも取り付けている。加えて、スタッフはマスクだけでなく、フェイスシールドも着用。非接触タイプの体温計も新たに購入して、入口で利用客の体温チェックも実施している。ここまで意欲的に取り組んだのは、もちろん感染防止のためだが、同時に「ここまでやることで、お客様に安心感を持ってもらいやすくなります。その心理的な効果が大きい」と岡田昌也店長は話す。働くスタッフも、「自分が働いている店は、ここまでやっている」と家族などに具体的に説明することができ、「スタッフの安心感」にもつながっている。
さらに、営業再開後は、「昼飲み営業」も新たに開始。取材した6月初旬は、まだ始めたばかりだったが、「昼飲み利用が一人もいない日はまだ無く、需要があるという手応えは感じています」と岡田店長は話す。一方、営業自粛中に一定のノウハウを築いたテイクアウト販売も、今後、さらに内容や売り方をブラッシュアップしていきたいという。テイクアウトも昼飲み営業も、まだ試行錯誤の段階だが、同店はチャレンジし続けることで確実に「前へ」と進んでいる。
また、営業再開後、岡田店長がより強く意識するようになったのが「飲食店の価値」。営業再開後に利用してくれた常連客の「やっぱりお店で食べると美味しい!」という声が、とても嬉しかったという。お店で一息つきながら、その日の疲れを吹き飛ばすように飲み干すお酒の美味しさ。調理のライブ感も楽しみながら味わう、作り立ての料理の美味しさ。そうした「飲食店の価値」を、改めて実感してくれている来店客が多いことに、岡田店長は「飲食人」の一人として勇気づけられたのだ。
そして、「飲食店の価値」と言えば「人(ヒト)」。「いつ来ても楽しい。元気がもらえる。お客様にそう言ってもらえることが、僕たちの存在価値。これまで以上に、そこの部分を大切にしていきたい」という岡田店長の言葉には、このコロナ禍にあっても前向きな姿勢を忘れない飲食人としての誇りが凝縮されている。きっとそうした思いこそが、「コロナに克つ」ための何よりの原動力になるに違いない。
炭火はじめ
神奈川県相模原市緑区橋本3-13
パークスクウェア1F

この記事を書いた人

Hitoshi Kametaka
亀高 斉
1992年に(株)旭屋出版に入社し、1997年に飲食店経営専門誌の「月刊近代食堂」編集長に就任。以来17年間、「近代食堂」編集長を務め、中小飲食店から大手企業まで数多くの繁盛店やヒットメニューを取材。2016年に独立し、フリーの企画・編集・ライターとして活動。