コラム

飲食店の「場からの脱却」。学習塾との連携、バーチャル多店舗化の2つのモデル例 飲食店の新たなビジネスモデル#2

(株)飲食店繁盛会・代表取締役の笠岡はじめ氏が、飲食店の新たなビジネスモデルを考える上で提示している2つの軸、「場の活用」と「場からの脱却」(図①参照)。「場からの脱却については、笠岡氏は以下のように説明する。
「『場からの脱却』は、『店外での価値提供』と『ネットでの価値提供』です。『店外での価値提供』はテイクアウトやデリバリーなどで、『ネットでの価値提供』はネットの情報力や新しい技術を生かした様々な取り組みです。すでに多くの飲食店がテイクアウトやデリバリーに注力しているように、『場からの脱却』は、これからの飲食店の新たなビジネスモデルの重要なカギです。飲食店は良くも悪くも『場』にとらわれてきただけに、『場からの脱却』へと発想を転換できるかどうかが大きなポイントになります」

図①

笠岡氏は今、テイクアウトやデリバリーに関しては「ゴーストレストラン」の発想を取り入れた売り方も顧問先の飲食店に提案。さらに、オンライン通販の取り組みをサポートするケースも増えているという。このゴーストレストランと通販については、次回以降のレポートで具体的な取り組み方を解説し、今回は、「場の活用」のモデル例を紹介した前回に続き、笠岡氏が提案する「場からの脱却」のモデル例を紹介したい。

図②

一つめのモデル例は、学習塾との連携を想定したもの(図②参照)。「場の活用」と「場からの脱却」の両方の要素が入っているモデル例だ。
「学習塾に通う子供に、きちんとした食事を摂らせたいのに、忙しくて難しいという親御さんが少なくありません。そこで、飲食店が学習塾と連携します。飲食店が作った栄養バランスの良い弁当を学習塾に届ける、あるいは塾に行く前後に、提携飲食店で子供が食事をできるようにするのです。これは飲食店同士の協力が地域貢献にもつながるモデル例です。1店舗では受け入れ可能な子供の人数が限られるので、『地域の飲食店連合』という形で対応します。また、家でオンライン配信による塾の授業を受けている地域の子供たちに、飲食店が食事を提供する提携の仕方も考えられます」(笠岡氏)

図③

二つめのモデル例は、「お店のバーチャル多店舗化」(図③)。「家庭」や「法人」というお店とは別の「場(団体)」を会員にして、「バーチャル多店舗化」を行うアイデアだ。
「一人一人の単体のお客様ではなく、『家庭』や『法人』という『場(団体)』を会員にするのが、このモデルのキモです。例えば、『家庭』であれば、単品ではなく、『ファミリーセット』をテイクアウトやデリバリーで利用してもらうモデルです。そして、それぞれの会員を『姉妹店』に認定する遊び心をプラスしました。商品を購入して家で食べてもらう際に、お店のランチョンマットなど、その場が『お店らしく』なるようなグッズも提供して楽しさを演出します。その様子を、『今日、我が家は〇〇支店です』といったコメントとともにSNSにアップしてもらえば話題性も高まります。『本店』の飲食店も、『1年で200店舗達成(笑)』といった発信で、楽しみながら『バーチャル多店舗化』を実践します。暗い話題が多い中、楽しさを強く意識したモデルです」(笠岡氏)

これらのモデル例は、飲食店における「新しい会員モデル」であることも大きなポイントだという。前回のレポートで紹介したモデルの「テレワーク会員」も、今回のモデルの「子供お勉強会員」と「姉妹店会員」も、これまでとは違った新たなアプローチで会員を獲得するモデルだ。
「会員を獲得すれば、『顧客リスト』を作ることができます。実はこれが真の目的とも言える本質的な部分なのです。顧客リストがあれば、顧客に向けてスピーディーかつダイレクトに情報を発信できます。実際、コロナ禍のテイクアウトやデリバリーでも、顧客リストがある店は効果的にPRすることができました。飲食店は顧客リストの重要性を再認識すべきで、その点も踏まえて提案したモデルです」(笠岡氏)
モデルの会員は、通常のお店利用も期待できる顧客だ。「テレワーク会員」の会社員が、時には知人や家族と一緒に店を利用するといった形で、通常営業の集客にもつながるようにしたアイデアなのである。
さらに、笠岡氏が特に意識したのは「地域貢献」。飲食店は元々、地域に根ざした存在であることから、地域の人たちの「困り事を解消する」という発想を持つことで、「場の活用」や「場からの脱却」のアイデアも広がるという。

そして、「場の活用」と「場からの脱却」から発想する新たなビジネスモデルは、時代の流れともリンクしている。
「数年前から外食業界では『生産性の向上』が大きな課題になっています。しかし、実際には、思うように生産性が上がっていません。利益率が低い飲食店は、従来の営業形態では生産性の向上に限界があるからです。生産性の向上のためにも、「場の活用」や「場からの脱却」の新しい発想が必要で、そのためには国も推奨している「DX」(デジタルトランスフォーメーション ※デジタル技術でビジネスモデルを変革する)を、より強く意識していくことも大切です。また、新型コロナウイルスの世界的な流行による反グローバル化の中で、飲食店においては『地域コミュニティ』が重要なビジネスキーワードになると考えられます。『地域貢献』を強く意識した新たなビジネスモデルは、この時代の流れともリンクしています」(笠岡氏)
 
このように、笠岡氏が提案する「場の活用」と「場からの脱却」の新たなビジネスモデルは、これまでの飲食店の課題や、激変する社会の動きを踏まえたものだ。具体的にどんなビジネスモデルを打ち出していくのかは、それぞれの飲食店のタイプや考え方によって違ってくるものの、笠岡氏の情勢の捉え方や発想の仕方、それ自体が多くの飲食店にとって参考になるものだと言える。

笠岡 はじめ
(株)飲食店繁盛会の代表取締役。飲食店販促コンサルタント兼Web活用コンサルタント。ウィズコロナ・アフターコロナに対応した飲食店の業態転換・ゴーストレストラン・通販事業構築など全国飲食店をサポート中。経済産業省推進資格ITコーディネータとしてIT分野でも活躍。著書に「飲食店完全バイブル 売れまくるメニューブックの作り方」など。(「飲食店繁盛会」で検索)

この記事を書いた人

Hitoshi Kametaka
亀高 斉

1992年に(株)旭屋出版に入社し、1997年に飲食店経営専門誌の「月刊近代食堂」編集長に就任。以来17年間、「近代食堂」編集長を務め、中小飲食店から大手企業まで数多くの繁盛店やヒットメニューを取材。2016年に独立し、フリーの企画・編集・ライターとして活動。

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