コラム

「場の活用」と「場からの脱却」。2つの軸から発想する飲食店の新たなビジネスモデル 飲食店の新たなビジネスモデル#1

先を見通しにくい状況が続いている新型コロナウイルスの動向。社会の様々なことが大きく変化する中で、飲食店の経営においては、どんな発想や取り組みが必要になっているのか。その方向性を探るために、話を聞いたのが(株)飲食店繁盛会・代表取締役の笠岡はじめ氏。笠岡氏は、これまで数多くの飲食店のコンサルティングを手掛け、現在はウィズコロナの対応策を全国各地の顧問先にアドバイスしている。コンサルティング業務以外でも、コロナ禍の企画として「オンライン酒蔵見学会」を主催。飲食店の支援サイト「マイひいきコム」も立ち上げるなど精力的に活動している。
今回からのレポートでは、笠岡氏が提示している「これからの新たな飲食店モデル」や、その具体的な取り組み方を紹介していきたい。

コロナ禍で大きな影響を受けている飲食店。これまでの商売の仕方だけでは売上の確保が難しくなっているケースが多い。笠岡氏は、「今、飲食店は発想の転換が必要になっています。『飲食店を飲食店として売らない』。それくらいの発想転換も必要です。しばらく新型コロナウイルスとの共生が続く可能性も踏まえて、飲食店の新たなビジネスモデルの可能性を探っていくことが大切になっています」と話す。
その際、重要になるのが「場」というキーワード。笠岡氏の資料・図①にもあるように、元々、飲食店は「場の商売」だ。「商品」、「サービス」、客席や空間などの「設備」を武器にして「場の商売」を行なってきた。そうした中で、発想転換のベースになるのが、「場の活用」と「場からの脱却」という2つの軸であるという。

図①

まず、「場の活用」について、笠岡氏は以下のように説明する。
「『場の活用』には、『従来の価値提供』、すなわち『飲食店としての価値提供』と、『飲食店を飲食店として売らない』という『新しい価値提供』の2つの方向性があります。コロナ禍によって、『従来の価値提供』についても、『新しい価値提供』についても、様々な可能性を探っていくことが重要になりました。『場』があるのは飲食店の強み。その強みを生かしながら、これまでとは違ったビジネスモデルを打ち出していくという発想です」
実際、今、外食業界では、笠岡氏の言葉にある「様々な可能性」に挑戦するケースが増えている。例えば、ある居酒屋では、昼は「かき氷専門店」として営業。それほどコストをかけることなく、店頭の看板や暖簾を変えて昼はかき氷専門店に大変身して成功しているという。これなどは、まさに「場」を生かしながら、これまでとは違ったビジネスモデルを打ち出している事例だ。
また、上記の事例のような昼と夜のいわゆる「二毛作」に限らず、夜だけ営業する居酒屋でも食事メニューを強化するケースが増えている。これも居酒屋における新たな挑戦の一つのだ。「居酒屋が完全に食事の店の業態転換してしまうと、コロナが終わった後に居酒屋に戻りにくくなる。そのため、メニューブックなども、どれくらいの比重で食事メニューを打ち出すのか、それぞれの店の特徴や客層を踏まえてよく検討する必要はありますが、私の顧問先でも居酒屋の多くが食事メニューを強化しています」と笠岡氏も話す。
ウィズコロナにおいては、飲食店に対して「本来なら行きたいけど、コロナ禍なので行けない」というお客の心理が働いている。そのため、「従来はお客様が『行きたい店』になれば良かったが、今は、いかにしてコロナ禍でもお客様に『必要とされる店』になるかを考えなければならない」(笠岡氏)状況だ。そうした中で、「従来の価値提供」、すなわち「飲食店としての価値提供」においても、「様々な可能性」を探っていくことが必要になっている。

では、「場の活用」のもう一つの方向性、「飲食店を飲食店として売らない」という「新しい価値提供」では、どんなビジネスモデルが考えられるのか。図②で紹介しているのが、笠岡氏が提案しているモデル例の一つ。飲食店の「場」を「テレワーク会員」に提供するモデルだ。

図②

コロナ禍によって、テレワークが急速に広まっているのは周知の通り。コロナ収束後も、新しい働き方として社会に定着すると予想されている。そこで、飲食店の「場」を「テレワーク会員」に提供するモデルが考えられるのである。
このモデルの良いところは、「家には子供がいて仕事をしづらい」といった悩みを抱える人たちの「お助け」になり、飲食店にとってもアイドルタイムなどの有効活用につながること。個室がある大型飲食店などが特に実施しやすいが、中小規模の店でも「テレワーク会員」という新しい切り口で顧客を獲得できる。会員は「個人」に限らず、「企業」と連携する形も検討可能。会員同士がつながることができるイベントの開催や、会員SNSでのマッチング情報の発信などで、リアル&ネットコミュニティも形成できる。

かなり斬新なモデルだが、これくらいの発想転換で新たなビジネスチャンスを探っていくことも必要なのが、ウィズコロナ、アフターコロナの時代ということだろう。「提案しているモデル例は、あくまでも参考例ですが、今後に向けて『変革』を目指す飲食店の方々にとって、何かしらのヒントになれば」と笠岡氏は話す。次回のレポートの「場から脱却」の解説でも、笠岡氏が提案するモデル例を紹介したい。

笠岡 はじめ
(株)飲食店繁盛会の代表取締役。飲食店販促コンサルタント兼Web活用コンサルタント。ウィズコロナ・アフターコロナに対応した飲食店の業態転換・ゴーストレストラン・通販事業構築など全国飲食店をサポート中。経済産業省推進資格ITコーディネータとしてIT分野でも活躍。著書に「飲食店完全バイブル 売れまくるメニューブックの作り方」など。(「飲食店繁盛会」で検索)

この記事を書いた人

Hitoshi Kametaka
亀高 斉

1992年に(株)旭屋出版に入社し、1997年に飲食店経営専門誌の「月刊近代食堂」編集長に就任。以来17年間、「近代食堂」編集長を務め、中小飲食店から大手企業まで数多くの繁盛店やヒットメニューを取材。2016年に独立し、フリーの企画・編集・ライターとして活動。

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